「 貨幣がなく 通貨がなく
物を「所有する」という事に制限が課される世界
自分自身が消費できる量以上のものを所有することは認められない
人口と出生率が統制され、全てが監視され、逃げ場はないが、何かから逃げる必要もない
共産主義とかそういうレベルでなく
機械とカメラによる完全な支配 自由意志の部分的剥奪による
「強制的な世界平和」
そういう世界であれば 管理された人たちは家畜ではあるが
そこに戦争や差別や迫害やイジメや自殺は存在できないのかもしれない
娯楽として歌や踊りや漫画やアニメやスポーツや劇団でもあればそれで十分に「幸せ」なのかもしれない」
「そう思わないか?」
『お前さんがその能力を使ってやりたいのは、世界平和、ってことかいね』
「いかにも」
『だがその世界ーーーきっと』
『ドラマがない』
「・・・それは認めるよ」
『そのへんをね、もちっとこう、』
なんというか・・・
老人は口をもんだ
『だってよぅ・・・』
『人が音楽や物語で感動するのは、世界が複雑だからだと思うんだぜ』
『あんたがさっき言った、理想の世界の人ってのは、培養器の中の微生物みたいなもんだろう』
「徹底管理する以外に人類から戦争や争いを取り除くシステムなんて作れっこない」
『あんたのアイディアはとても良いと思うんだがね』
『どうにもこう、100点を101点にできねえか、って俺は考えちまうタチでよ」
『却っていつも、0点にしちまうんだがな!』
「僕に101点にする方法を考えろってことですか・・・」
『一緒に考えようぜ』
どんな世界にも不満はあるというなら
「選択できるような世界」
『選択・・・?』
「無数の層になっていて、同じ理想を望み、同じ価値観を持つ人間が
自動的に集積する世界」
「管理されるのが窮屈という人間用には、そういう世界を」
「隠遁と孤独、個への没入を求める者にはそんな世界を、棲み分けさせて、仕切りを設ける」
「コミューンの思想」
『なるほどな。”類は友を呼ぶ”ってわけだ』
『いいねぇ。マイナーな趣味を持つオタクも仲間が見つかるってわけだい』
「でもこれも・・・」
『ああ、何と無くダメそうな気がするな』
『いっそのこと、培養して、全員薬漬けにしてしまう快楽世界のほうが手っ取り早いんじゃねぇかい』
「マトリックスみたいだな」
『あんた若いのに古い映画を知ってるねぇ』
「昔ケーブルテレビでみてね。録画して繰り返しみたよ」
『アニマトリックスっていうアニメ版しってるかい』
「それもみたよ・・・って雑談してる場合じゃないと思う」
『おっと悪かった』(アニマトリックスはアート映画として面白いです By GentleGirl)
人は欲を追う
それならば
「転生が前提の世界」
「生死に意味のない世界」
「いつでも好きな時、自由に死に、自由に好きなものに生まれ変われる世界」
「これなら衆生の中で、欲望に振り回されたり、他人と自己を比べる必要すらない」
『なるほどな、宇宙の構造そのものを変えようって話かい』
『時間を巻き戻したりも簡単にできたりもできると便利かもな』
「その通り。記憶は引き継ぐことも、部分的に忘れることも選択できる」
『それは確かに面白いかもな、ただ、生きてると死んでるっていう状態が区別されないとなると』
『幸せとか不幸とかっていう概念もくなるわけだな』
『最後は、生きることが面倒くさくなるんじゃねえか?』
「ふむ・・・」
『俺は自分のことを生き物だと思ってるからよ』
『そういう、神とか霊とかっていうレベルのことはよく分からねえ』
『俺達が議論していたのは、生きている者たちをどう幸せに導くかって事だったと
思っていたぜ』
「確かに、話が脱線してしまったかな』
『死」
2人の神は、雑談をしながら、適当に能力の使い道を決めた
『「『「死後に救済される世界観」』」
いくら議論しても答えはでなかったから、
ざっくりそれだけ決めて、あとは人間という種族の可能性に賭けた。
いや、正確な言葉で表現すると、人間を捨てた。
人間に対する興味をなくしたと言ったほうがいい。
救いようのない生き物・・・。
「一度、それで試してみよう」
「この能力、何度でも使えるみたいだからな」
『それがいいさ』
============だが============
死後の世界、その救済に逆らうものがいた
救済?
この私を”救済”するつもりか
無礼者
神だか知らんが
貴様がすべきなのは、私への賛美!服従!
救済だと?たわけが!
自分を中心とする世界を持つ者だった
『おいおい、威勢のいい奴がきたぜ』
「困ったな、どうしたものやら」
神とやら!私を賛美せよ!私に服従を誓え!
「はいはい、神は私達ですよ」
「えーと、そこの君、ちょっといいかな」
「実は僕、自分の能力を持て余してて困ってるんだ」
「そこの威勢のいい君、僕の能力をもらってくれないか?」
「こんな能力もってても、辛いだけなんだよ」
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「・・・そういうわけで、僕、世界を作り変える能力をその子にあげちゃってさ。
今この世界の運命はその子が握ってて、その子がラスボスってわけ
そんで君がそのラスボスと戦うゲームの主人公として僕が選んだキャラクター
だから演じてもらいたいんだよね
やってもらえるかな」
選ばれし子は頭をかいた
「そっかぁ、選ばれちゃったのね」
「俺、忙しいんだけどなぁ・・・。」
へぇ・・・ふぅーん・・・。
打席に立ったイチローのポーズをとって
「元・神」の頭を、いつも気に入らないやつの頭を殴るみたいに、ぶち抜くかと思ったその時
「気が向いたらってことで」
その一言で、この物語は何となくテキトーに始まっていくのだった
5分後に
「ラスボスを裏で操ってる黒幕がお前ってことでOK?」と言われ
グレた野球少年にバット持って追っかけられたのはまた別の話